だって自動車じゃなくてもいいんだもん

自動車評論家の徳大寺さん(徳大寺有恒さん)がよく、「近頃の若者が車に興味がないのは自動車メーカーの作る車に若者を惹きつけるだけの魅力がないからだ!」とおっしゃっておられることについて、かねてからなんか、違うんじゃね、と思っていました。

車に魅力があろうがなかろうが、自動車を運転することで特にいいことが起こるとは思えないというのが今の若者の自動車に対する気持ちではないでしょうか。

1960年代から1980年代までは車に乗れば好きな時間に行きたいところへ行けるということがとても優位に働いたのではないかと思う。だってその場に行かないと得られないコミュニケーションの場が多かったから。その場にたどり着く速さ、フットワークの良さが、情報にたどり着ける速さとイコールだったから。もちろん、若者が自分で乗れる車を持っていること自体が鼻が高いことだったし。

バブル期の男子が女性を送り迎えする見た目のかっこいい車(外車やスポーツカー)の時代はモテる道具として目的がはっきりしていたけど、1990年代後半からはすっかりミニバンや、UV車と便利で使える実用車という性格が強くなった。車は人の下僕となったのだ。そこにケータイやインターネットが出現して、車がなくてもコミュニケーションは容易だし、情報にアクセスできるスピードは車ではかなわなくなってしまった。

若者の車離れといっても、実際に地方では車がないと仕事も生活もできないので、本当は離れていない。生まれたときから家に車はあるし、今やローンで月収の1/3がなくなる、というようなムリをしなくても日本車は性能がいいから、当たり前のように車の恩恵を受け、淡々と乗りこなしている。適度に満足していて車について特に語ることはないのだ。

おととい放送されていた日テレの現代版「幸せの黄色いハンカチ」を見ていて、オリジナルは、武田徹矢が赤いファミリアを自慢げに運転していたのに対して、現代版の若者はバスで移動してきて、宿ではスマホを退屈そうに眺めていて、移動手段は堀北真希が運転する軽自動車だったときに、思い出した私の仮説です。