震災後1

 東北関東大震災/東日本大地震東日本巨大地震(など、まだ用語が統一されていないです)とにかく3月11日の大地震と大津波の後のことについて。

 たくさんの方、便りがなかった懐かしい方からも心配のご連絡をいただいた。

 福島県郡山市の我が家。家具が少し移動。本棚の本が床に散乱。実家は家具ごと倒れていたが全員無事。市内の古いビルや、商業施設は1階部分がつぶれていたり、奇をてらった形の屋根が斜めにひしゃげていたり、地域単独の地震であれば相当インパクトが強い、大きな被害を受けている。が、太平洋沿岸地域の被害の大きさに比べれば、相対的には被害は少ない所だ。

 私の住むところは、断水やガスも止まらず、停電もなかったので、きわめて恵まれている。ただ、他の地域と同じく、ガソリンが不足。毎日スタンドから車の長い列で道路の1車線が埋まっている。

 震災直後の第一福島原発の事故があり、避難地域(20km)、屋内退避(30Km)の措置が取られているが、郡山市内の人でも私の家の隣の人や、子どもの塾の先生も首都圏に自主避難している。
 塾は、公立の学校に準じて塾は震災後休んでいる。首都圏に避難した塾の先生からの電話では、「放射能は見えないだけに怖いからしばらく休む」といっていた。
 郡山市内に残っている塾生の親にそんなことを平気で言う。「マイクロシーベルトだから人体に影響する確率の何千分の一だ」という理解より、見えないものだから怖いというのは、数学を得意とする先生なのに何のための学問なんだとも思ったが、ものごとの捉え方、センスの違いだろう。しばらく戻らないつもりか。
 
 とりあえず、避難圏外だから避難しないとしか、言えない。圏外なのに率先して避難するだけの理由が見つからない。私はまだ地域との繋がりが希薄な方だが、家族はそうではない。地域の中で必要とされているからだ。
 
 今日現在は、空中の放射能濃度が第3号機の東京消防庁による注水活動以前より半分の数値となっている。
 しかし、郡山市の値は、測定の仕方を間違っていたらしく(地上で図るべきものを、建物の3階で計測していた)1.5マイクロシーベルトぐらいだったここ数日の値はすぐに3倍ぐらいになった。
 
 福島県産の野菜の一部に摂取制限が出たことは、本当に残念だ。昨年から、農家の方々に話を聞く機会があり、何人もの人にお会いしてきたが、みんな自分の畑に手をかけ、おいしいく収穫できるように心血を注いでいる人ばかりたちだった。お電話で話した方は「本当に悔しい」と言っていた。県単位の産地表示は早く止めて、せめて被爆量の少ない会津の作物は出荷できるようにして欲しい。地元でたくさん野菜が取れるのに、地元野菜が食べられないのは本当に寂しい。
 今後の営農計画もぎりぎりまで待つように指示されている。お米もそろそろもみを水に浸して発芽させる時期だが、土壌汚染の影響が予測できない今、それらの予定が止まってしまっている。

 春の高校野球が開幕し、仕事中の情報源としていたNHKのラジオが頼りにならなくなったので(高校野球にはむかしからまったく興味がない)、民放のラジオ福島に切り替えてみた。平穏な時はほとんど聴く事がない局だったが、逐一地元の情報が入って本当にありがたい。

 番組では、福島県から「放射線リスク管理アドバイザー」として委嘱された長崎大学大学院教授山下俊一教授の講演会の模様をを何度も流している。放射能の影響についてどのレベルで心配するべきかを冷静にわかりやすく、やさしく話しかける声は まるで生活苦にあえぐ未開の地に降り立った、布教活動をしている宗教家のようでもある。
 その講演会での質問をする方の話も、一つ一つ心配のあり方が現実的で身につまされる。地元に留まって頑張る人々に胸を打たれる。

 ただ、福島第一原発の冷却作業が思っているよりはるかに時間がかかり、月単位になってくることがうすうすわかってきた。蓄積する放射能物質量がどのくらいになるのか、またSPEEDIヨウ素の広がりのシュミレーションでは、同心円状に拡散されていないことが予想されているため、実際には放射能物質の濃度が高いところが距離だけでは予測しにくい。

 安心してくださいという地元のラジオのメッセージと、(震災後、radikoアプリでここでも聴けるようになった)の在京ラジオ局で宮台真治氏などが言っていることは間逆で、戸惑うことも多い。危ないのか。だとしたらどうしろというのだ。

 だからたまに知人から電話があって「どっか避難しないんですか?」と軽く言われると本当に過敏になってしまうのだ。
 放射能を理由に退避圏内でもないのに、避難したらいつ戻ってこられるのか。その判断はどう自分の中で折り合いをつけるのか。


 燃料が手に入らないため無駄な外出を控えているためか、店舗が半分も空いていないためか、街は寂しい。夕方、信号待ちの交差点の車が本当に少ない風景をみて、ああ、内側に今いるんだなあと思った。

 放射能の値(シーベルト)は、細胞を傷つける影響度である。細胞はストレスでも傷つく。

 被災後のみなさんの日々のストレスはいかばかりだろう。

 震災直後には想定できなかったことが幾重にも起こり、とまどっているので、久しぶりに書いてみました。

 来週には営業しているかもと思っていた行きつけの化粧品店のオーナーから、実家が多賀城市津波に遭い、交通事情や燃料事情で帰ってこられないと電話があった。

 本当にたくさんの人が災害に直面しているし、その影響をみんな少しずつ受けている。
 まだまだ、ままならないことばかりです。