前略、

「前略おふくろ様」をスカパーで放送していたので、たまたま見たらやめられなくなってしまった。

 子どものころ、親が見ていたのを覚えているぐらいで。萩原健一の母親役も田中絹代じゃなくてずっと三益愛子だと勘違いしていた。

 職場、親子、兄弟、男女のしがらみの中で、板前見習いのショーケンが顔をゆがめながらもがく様がすばらしく絵になっている。(周りから「あのブス!」といわれている)幼ななじみと晩婚する役の室田日出夫のアップも毎回おかしくて見ごたえあり。
 ショーケンの顔の小ささ、腰の細さ、足の長さ、今見てもすごいし、ガールフレンドの坂口良子もいちいちかわいすぎる(計算してかわいい女を演じているキャラクターなのだが、それでもかわいい)。
「前略、おふくろさま」と何かあるとつぶやく、ナレーションの入れ方も絶妙でいいんですよ。

 1960年代にくらべてぐっと豊かになった1975年(それでも田舎から出てきた若者が暮らすアパートは風呂なしの4畳半一間)。気になるのは故郷に置いてきた年老いた親。
ドラマにも親子関係、世代交代に悩む登場人物がいて、旧い日本のなにがし(人情? 習慣? 文化?)のことをすっかり忘れているけどいいのかい?というテーマが貫かれている。

 昭和50年。この頃の日本は、新聞を読むと「女性アナウンサーにニュースを任せられるかどうか」ということがまじめに議論されていたりして、遠い昔の感がある。

「前略おふくろさま」でも男は女を守るものという前提で会話が進められていく。若い娘が深夜までデートすれば、父親が相手の男を呼び出し、ビビらせる。
 
 自由がないけど守ってもらうのと、好きなことやっていいけど落とし前も自分でつける。35年後の今でもどちらがいいのかなあと思います。
 いやいや、どっちからもいいとこどりしたいんですけど。駄目ですか?

 こんな面白いドラマ26回分見ていたらものすごいエネルギー吸い取られてしまって、仕事がつらいのでした。終わってホッとしている。