交差
(今日からまた少しの間「だ」「である」調で書きます)
雪国に講師の役を頼まれて行って来た。
夢中になって話をしているうちに講座が終わった。薄々気づいていたが、私はマイクを持つと気が大きくなる。
出かけて行った地は、かつて私が会社員時代に担当していたスーパーのチェーン店の本社がある。
ちょうど、高速バスの乗車場がその会社の近くだった。本社も入っていた街の中央にあるその店舗は当時よりかなり寂れている。
そのスーパーの商談相手のバイヤーは怖い人で、あまり人に怒られずに育ってしまった私は会う日は恐怖に震えていた。
冬は商談の日に限って、大雪に降られた。車ではいつ着くのかわからないし、峠で吹雪にあったら帰って来れなくなるので、雪国では一番信頼できる電車を使った。
電車といっても、都会の通勤電車ではない。日中乗ったら、ボックス席で駅弁や、うどんやそば、家から持ってきた漬物を広げ、ワンカップ片手に旅を楽しんでいるような、のどかな光景が広がる車内だ。
その中で、真冬にもかかわらず、見本の商品(春夏シーズンのものなので)を冷たい状態で試飲してもらえるよう、クーラーボックスを抱えて坐っていた私。
今の自分の姿など想像もせず。
いつも将来のことなど考えられないのだが。