大リーグボール養成ギブス本

 東京で行われるた読書会の課題図書は『ウィキノミクス』。この読書会を主催する日垣隆氏がメルマガの中で
《一種の大リーグボール養成ギプスみたいな本です。このあとで例えば坂本桂
一『頭のいい人が儲からない理由』(講談社)を読んでみてください。どこに
も引っかからずすらすら読めることに驚くと思います。》と書いているのは本当で、モータースポーツ関係の本を読んだら、東京から新幹線で戻る間に読めてしまった。
 そういえば、翻訳本は独特の文の運び方があるようで、私は『ヤバイ経済学』や『文明崩壊』を読んだときもけっこう苦労した。

 読書会はとてもとても楽しい時間だった。多くの参加者がいる中で同じ本を読んで様々な意見があって、それをみんなで尊重しあって、自分に合うところはそれぞれカスタマイズして取り入れていくという進め方がとても気持ちよい。

 おお、この読書会が「ウィキノミクス」的だったのではないか。

 課題本『ウィキノミクス』(ドン・タプスコット、アンソニー・D・ウィリアムズ著 井口耕二氏訳)には、
世界中の熱意と善意の人が繋がりあって新しい価値がうまれる例がたくさん出ている。鉱山や、医学や、企業の開発や、靴のデザインや、Ipotの改造や災害救済情報などなどなど。

 読んでいて私の頭に浮かんだのは映画「三丁目の夕日」の須賀健太君だ。
須賀健太君が考えた未来都市の話を、引き取って住まわせている売れない作家である吉岡秀隆がパクって少年誌に書いてしまう話。結局はばれるのだが、須賀健太君は怒るどころか、「僕の考えた話を小説にしてもらえるなんて・・・」と、感激して涙をつーっと流すのだった。

 善意のアイディア群はどのようにか取りまとめられ、ひとつの形(価値)を生み出すとして、時間や労力をかけてアイデアを出した側が、須賀健太君のようにできた形をみるだけで嬉しいのかどうかが良く分からない。一度目はあるとしても何度も同じように「はい、出して」って言われたらちょっとげんなりするのではないのか。
ウィキノミクス」は、参加することで自分が良いほうに変わるという実感のみが原動力になるのではないか。
 
 それから、会場にいらしていたテクニカル翻訳家の方はお二人とも、何故かウエストポーチをしていた、という謎が残ったままである
 (テクニカル的に合理的なのか)。