満月とアーロンチェア

 近所の田んぼに重機が入った。住宅街に囲まれた最後の水田。水を張った初夏の夕闇には家々の窓明かりが映り、子どもの手を引いて帰宅する時にその風景を見ては何度和んだことだろう。私の家もかつては田んぼだったので、そこだけ残せなんてことは言えた立場ではない。その水田の世話をしていた農家の方もかなり高齢だったので、色々と事情もあるだろう。ただ、もうあの風景は昨年が最後だったんだと、失くした物に気がついただけだ。
 
 通販で買ったアーロンチェア(机仕事用の高機能椅子)が届く。

 今までお尻と腰だけで支えて座っていた椅子から、体をすっぽり包み込む椅子になった。まだ使いこなせていないが、このすわり心地はちょっと後を引く。また座りたくなる。