お世話様でした。

 息子は幼稚園を卒園してからも、そこで行われる低学年対象の体操教室に通っていた。計5年間お世話になっていたが、今日はとうとう最後の教室。帰り際に先生方が一緒に写真をとって下さったが、息子は恥ずかしがってむくれ顔の写真。「変わってないねえ」と皆で笑った。もう、縁がなくなるのだなあと少ししみじみしてしまう。

 最近初めて幸田文の著作を読んだ。家庭人として暮らしていた中年女が訳あって芸妓置屋に女中として働くという作品『流れる』である。
 辛酸をなめたであろう主人公の芯のある、峻烈な視点で描かれた無駄の無い表現にかっこいいー!と惚れ惚れしてしまった。この主人公の強さに憧れてしまう。
 <しろうとの世界は退屈で広すぎる。広すぎて不安である。芒っ原へ日が暮れていくような不安がある>と私たちの平凡な日常をすっきりと言い切る。
 気に入った箇所のページの端を折って行ったら、本がやけに厚くなってしまった。
 ところで、この本の主人公の名前は「梨花」。本の中でもかわいい名前でからかわれるのだが、つい「りんか」と読んでしまい、打ち消す。TVの見すぎだなあもう。
 続いて著者の随筆集『雀の手帖』も読み始めたが、1200字の中の完全な世界に圧倒され、急いで読むのはもったいないとも思えてきた。旅のお供に取っておくことにする。

 このところ、家では、講談社の児童向け『平家物語』をお酒を飲みながら読んでいる。私の小学校入学のお祝いにと叔父さんがくれたもを30年もかかってやっと読み始めている。きっかけは大河ドラマの『義経』なので情けないのだが。
 フジTV の『不機嫌なジーン』に出てくる「鵯越(ひよどりごえ)大学」の「鵯越」は平家物語に出てくる義経が馬で超えた厳しい山のことであることがはじめてわかったりして。