大正時代は面白いらしい

 『白樺たちの大正』(関川夏央著 文春文庫)を読んでいる。武者小路実篤の「新しき村」運動などを通して、「大正時代の空気」を丹念にあぶりだしている。必ずといっていいほどこの手の運動家達の高邁な理想とは裏腹に、好いた惚れたやらの人間関係の話しが実は面白いのだが(「女性自身」は歯医者の待合室を除きなかなか人前では読めないがある種の覗き趣味は同じかも・・・)。

 橋本治氏は『乱世を生きる 市場原理は嘘かもしれない』(集英社新書)のなかで<「ある時期ある期間を経過して、気がついたらすごく大きく変わっていた」というのが、日本の社会の変わり方でしょう>と述べているが、確かに思へば遠くまで来るところまできてしまった「どんづまり」感を抱えているのは、自分の中でも実感としてある。
だからここらで現代の原点と言われる(サラリーマンの出現、大学の大衆化、恋愛の大衆化風俗化・・)大正時代を振り返るのは面白い。
 それにしても大正時代は私には遠すぎる。しかし、向田邦子の随筆に出て来る昭和10年代の東京市内の風景は、昭和40年代の地方都市を思わせるところもあって懐かしささえ感じるのだ。