わたしとブランド品

 三田村蕗子著『ブランドビジネス』(平凡社新書)を面白く読んだ。

 この夏、はじめてルイ・ヴィトンのバッグなどを買ってみた(カードの支払い完了済み)ので、このようなテーマの本を読む気になったのだと思う。

 今の若い子達がまるでキャラクター商品でも買うかのように気軽にブランド品を持ち歩いているのと違い、私にはなかなかハードルが高かったのである。学生時代からファッション雑誌には有名ブランドのバッグを持ったモデルの写真であふれ、そのランクのブランド品が変えない庶民女子大生はレノマやクレージュなどのお手ごろ品を持ち・・そのバッグにも手が出なかった私は屈折していた。丸井で5回払いで購入したブランド品ではない黒の革のバッグを手にしたときにでさえ支払いのことで頭がガンガンしていたことを今も頭痛を伴って思い出す。
 私が社会人になり、ブランド品に手が出るようになったころ、「一生モン」だったはずのブランド品はデザイナーを替え、トレンドを求めるようになり、流行り廃りにさらされることになった。

 さて、本書では、なぜ日本のブランドマーケットが巨大になったのか、特定のブランドだけが売れ続けるのかを日本の社会構造から描き出し、今のブランドビジネスを俯瞰する。

 日本独自のライセンスビジネスの凋落ぶりにも興味深かった。 そういえば私が初めてブランド品を意識したのは地元のスーパーで売っていた傘マークの白い靴下である。思えばその時点でブランドイメージは崩壊していたのだが・・・。
 
 著者は日本の市場も、消費者も、人気ブランド(その証拠にブランド品だと分かりやすいバッグだけが日本では売れる)に群がるばかりではなく、自分で良いと思うものをじっくり育ててはと願う。

 日本のマーケットはあるものさえ持てば一発逆転ができるという幻想を撒いているのだと、私は思う。それは中古の高級車をVIPカーと言って手に入れるヤンキーやブランド品を見にまとって「セレブ」になりたいと願うギャル達に現れている。